2017-09

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ジェイン・オースティン『高慢と偏見』読了。


ジェイン・オースティン『高慢と偏見』が面白かった件について。


『高慢と偏見』、やけに厚みのある本だし、古いし、この語り口だしとかなり読みづらそうだし……と最初は読み通せるかも分からなかったのに、すごく面白かった。

ファンタジーでもミステリーでもない、ごく普通の恋愛もの。しかも「世界名作全集」に入ってそうな古い作品。いつもなら絶対「ふーん」で終わるところなのに、やけに面白く感じた。

なんでだろう。と、いろいろ考えてみた。ネタバレありです。


1.自分の方にある要因

まず一つ目は、ジェイン・オースティンという作家に出会ったのが初めてだということ。

初めて読むということは、その作家の傾向が分からないということだ。それこそ、ハッピーエンドが好きなのか、シニカルな作風なのか、主人公がめちゃくちゃひどい目にあわされるのかも分からない。

だから、変に先を予想して読みたくなくなったり、興ざめしたりすることがなかった。この予測できなさが良かった気がする。

次、二つ目の要因。なんだかんだいって、私は古い時代の物語が好きだ。

ちなみにこの本を図書館で借りたとき、江戸時代が舞台の時代小説だ。これはこれで面白かった。

昔から歴史とか時代物が好きで、レトロなものが好きだったので、この作品が18世紀末のイギリスというのは、とても趣味に合っていたと思う。

馬車が現役の時代ってのがいいよね。馬車。実際に乗ったらすごく揺れてきついだろうけど。

ともあれ、通信手段と言えば手紙、移動手段といえば馬車、今と比べたらかなり不便な時代。それくらいの時代の方が好きだ。



2.作品そのものについて

今度は、自分だけでなく作品本体が面白い理由について考える。

やっぱり、王道っていうのがいいのだろう。

主人公は、五人姉妹の長女ジェインと次女のエリザベス(と考えておく)。

ジェインの恋は、「素敵な人に会った!たぶん両想い」から、「でもあの人は遠くに行ってしまった。気持ちが分からない……」となり、最終的には「やっぱり両想いでした」というストレートさ。

一方でエリザベスも王道。「何あのひと、やな奴!」という耳をすませば的なところから、いろんな話を聞いて「やっぱりやな奴じゃないの」と他の人が気になったりしてたら別の噂で「あれ?本当は良い人なのかも……」、ある事件でお世話になって「どうしよう、やっぱり良い人だった!」と印象が180度転回。

面白かったのは主に後者、エリザベスの話。彼女はしっかりと自分の意見を持っていて、それをはっきり言い出せる人。(特にラストの夫人との応酬とか、ダーシーとの決定的瞬間のやりとりとか、ほんとスカっとする)

というわけで、相手役であるダーシーに抱いた印象(というかまあ、嫌いだということ)をわりとはっきり言います。一応社交界云々の話なので言葉遣いは丁寧で慇懃だけど。

ダーシーも愛想ないしお互いつんけんしてます。でも彼の方が先に、エリザベスに対する印象を覆される。

そして後からエリザベスの方も印象を変える。この、登場人物が相手に抱いた「印象の変化」が作品の魅力かも。

しかも二人とも苦悩しながらも認めざるを得ない、どうしても認めないわけにはいかない、としぶしぶ受け入れているわけです。そこがけっこういい。なんだかんだ言って二人とも素直。

というわけでエリザベス可愛い。最初は「偏見」にさらされていても、「私は偏見を持っていた」と気づいて後悔したり、相手の良い部分も徐々にだけど受け入れていく。その過程や揺れ具合がすごく良かった。「キャラクター」というより「人間」って感じ。ジェインのひたすら善良な性格よりも人間味があるなって。

たくさんいろんなことについて分析して考えて、冷静で理性的で、でも自分の気持ちを否定するわけでもない。すごくバランスが取れている人だと思う。そういうところもエリザベスの魅力なのかな。

ここまでで、
・王道のストーリー(人間はみんな王道が好きだよ!)
・登場人物の感情や考えの変化、揺れ
・人物の性格そのもの
が、魅力ということが上がった。

あとはなんだろう。

人物に関して言えば、あの、ジェインとエリザベス以外の家族はとんでもないんですけどね……とくにお母さんがね。

あのお母さんはきつい。ついでに言うと末の妹もマジやばい。おかげで姉二人はかなりやきもきするわけです。

ああ、この辺もいいのかな。あのとんでもないお母さんと末っ子のおかげで、ジェインとエリザベスがすごく魅力的に……お母さんは反面教師かな。

そうだこれもだ。
・現代の女性も共感できるところ
これだ。

何が恐ろしいってこのお母さん、とにかく五人姉妹を「片づけ」ないとって躍起になってるところ。片づけってのはつまり結婚である。

オールド・ミスにならないように、とにかく嫁がせたい。もちろんお金があって、立派な紳士で、近所に土地と邸宅があって……ものすごい高望みだけどとにかく妥協していいから嫁に行かせないと、とまあ、娘たちを急かすわけです。

これは娘たちには結構なプレッシャーになります。特に女性が働くことのない時代だし。もろもろきつい。

現代でもあります。成人して働き始めて、楽しくなってきたかなーとか思ってたら「結婚は?」って。

この一言、超怖い。このあたりが今現在の私にもすごく響いている。作中で「姉がオールド・ミスになったら面倒見ないといけないんだよなあ……」とか心配されていたシャーロットと同い年だし。

シャーロットの場合は取るに足らない人物と結婚することになるわけですが、それもこの恋愛物語において珍しくも、「家庭を持ちたい」という理由から。彼女も相当なプレッシャーがあったんでしょう。

前述の、この本と一緒に借りた時代小説も『姫は、三十一』(風野真知雄)で、まあこのお姫様も三十一歳なのに結婚してないんですが。

えー、つまり、いつの時代も女性は結婚と結婚を急かす周囲(特に母親)に悩まされる、というところ。この作品全体のテーマが今の私にぴったりだったわけですね。

あ、もしかしたら五人姉妹というのも……自分も三姉妹だからなんとなく共感しやすかったのかも。ちなみに若草物語もわりと好きだったりする。

つまり、「自分と共通した状況・境遇」。それでいてハッピーエンドだったことも、楽しめた要因だろう。自分の状況には影響がないにしても。



こんなところだろうか。

まとめると、
・初めて読む作家で新鮮だった
・古い時代が舞台で、趣味に合っていた
・王道のストーリー展開
・登場人物の揺らぎ、変化
・登場人物の性格
・今の時代の人(含む自分)と似た状況、状態で共感できる
こんな感じ。

そうか、これが面白さの要素かー。
読後感も良かったしね。これも良さだ。

ああよかった。面白かった。ハッピーエンドだし。
恋愛ものを楽しめた新鮮さも。

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鈍色

Author:鈍色
鈍色だったり丼だったりYOUだったり、と場所によって名前が変わってます。でもだいたい丼と名乗る。
本と漫画とゲームをこよなく愛しつつ、しかし時折拒絶反応が出て、なおかつ活字中毒症状が出て死にそうになります。
歴史とか神話とか宗教とか大好きです。
哲学無き人生は無意味。とか言ってみる。

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